セクハラ、会社は責任を取る?訴訟事例から考える企業の予防対策 (1/2)
こんにちは、社会保険労務士の柳田真です。
今回は、セクハラ問題について、実例を紹介しながら事業主が負う責任についても考察します。
某かつらメーカー大手企業の店舗勤務をしていた元従業員の女性が、上司の男性従業員からのセクハラにより心的外傷後ストレス障害(PTSD)となり、退職を余儀なくされたとして、同社に約2700万円の損害賠償を求めて提訴。
その訴訟が、先日、大阪地裁で和解したことが判明しました。
訴状によれば、2008年3月に当時、別の店舗で店長だった男性が、指導目的で女性が勤務していた店舗に来店。
そして男性は女性に対し「数字を達成できなかったら彼女になるか、研修もしくは転勤だ」と言って脅す、無理にキスをしようとする、さらに体を触るなどのセクハラ行為を行いました。
女性は、警察に被害届を出そうとしましたが、会社の幹部から制止されてしまいます。
こうしたことから精神的に不安定になり、会社を休職するようになりました。
2010年1月には、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断され、特別休暇扱いになり、その後に給料支給を打ち切られ、2011年9月に会社を退職しました。
セクハラについては労働基準監督署が労災と認定し、休業補償給付を受けているそうです。
今回の和解条項では、同種の訴訟の和解額に比べてかなり高額となる1300万円の解決金を、会社側が支払うことが条件とされています。
また、解決金のうち半額の650万円はこの男性が負担し、同社は、男性の勤務地及び出張先について、原告の女性が居住する地域を避けるよう努めることも和解条項に盛り込まれました。
事例にあるように、セクハラが原因で精神疾患を発症した場合にも、業務起因性が認められ労災認定されることがあります。
厚生労働省の「心理的負荷による精神障害の認定基準」(平成23年)では、セクハラによる被害も心理的負荷となる出来事とされているのです。
- セクハラの内容、程度等。
- その継続する状況。
- 会社の対応の有無及び内容、改善の状況、職場の人間関係等。
心理的負荷が「強」と判断された場合には、原則的に業務起因性が認められることになります。
- 身体接触を含むセクハラ。
- 人格を否定する性的な発言が継続的に行われた場合。
- 会社側が適切な対応を講じなかった場合。
セクハラの事実が確認された場合、加害者が被害者に対して民法の「不法行為責任」を負うことになります。
また、使用者も「事業の執行について」セクハラ行為が行われたのであれば、加害者の使用者として、同じく民法の使用者責任を問われ、加害者と連帯して損害賠償責任を負うのです。
前述のような労災が認定された場合には、ほぼ使用者責任を問われることになります。
また使用者は、労働者の就労環境が害されないようにする注意義務、そして、働きやすい職場環境を維持する義務を負っていますから、それらに反した際には、民法上の不法行為責任や債務不履行責任を負うのです。
これらの責任は、会社が被害者からの相談など、セクハラの事実を認識していながら何も対処しなかった場合などに厳しく問われる傾向にあります。
「男女雇用機会均等法」では以下のように定められています。
事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
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東京都社会保険労務士会 総務・財務委員会委員
東京都社会保険労務士会港支部 総務委員長
東京都社会保険労務士会 無料電話相談(社労士110番)担当
一般社団法人産業保健法務研修センター 正会員
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足立年金事務所 厚生年金適用調査課
柏労働基準監督署 就業規則・36協定点検指導員
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