「有給が取れない!労働基準法違反だ!」有給の基本的な考え方と時季変更権、知ってる?
有給を取らせてもらえないブラック企業。なんとかして有給を使わせない上司。有給休暇の歴史・取得日数・時季変更権など、正しい知識を蓄えて反撃しましょう。
こんにちは。さとう社会保険労務士事務所の堀 真寿です。
今回は、年次有給休暇に関する「① 要件 ② 与え方 ③ 計画的付与」の3つについてお伝えします。
特に、年次有給休暇発生の要件や会社が持つ時季変更権について知らない方も多いと思いますので、理解して頂けると幸いです。
まず、年次有給休暇の歴史について少し説明させて頂きます。
日本で初めて有給が導入されたのは、戦後の1947年に定められた労働基準法第39条によるものです。
制定当初は、当時の国際労働機関に定められた最低日数6日に倣い、労働基準法でも最低日数を6日としていました。
その後、ILO(国際労働機関)が日数を引き上げしたため、1988年に現在の最低10日に引き上げられております。
年次有給休暇とは、定められた休日以外に、従業員が給料を貰いながら休める休暇のことです。
6ヶ月以上勤務し、全労働日の8割以上出勤した従業員に対しては、10日間の年次有給休暇を与えるのが、労働基準法のルールとなっています。
入社後6ヶ月を経過したら、従業員はその後1年間に10日の年次有給休暇を取得する資格を得ることになります。
以後、勤続1年ごとに直前の1年間の出勤率が8割以上であれば、年次有給休暇の権利が発生します。
この年次有給休暇は、長く勤めれば年次有給休暇が増えていきます。
下の表は「一週間の労働時間が30時間以上(パートやアルバイトも含む)」の方の年次有給休暇数です。
年次有給休暇をいつ取るか、日にちの選択権は原則従業員にあると考えます。
事前に従業員から請求があった場合、会社は指定された日にちに年次有給休暇を与えなければならないことになります。
しかし「どうしてもその日に休まれては困る」という日もあります。
その時には、会社は年次有給休暇付与の時季変更権を使うことが出来ます。
時季変更権とは、年次有給休暇の請求が「事業の正常な運営を妨げる場合」に他の日に変更させることが出来る、会社が持つ権利となります。
ケーキ屋さんで、12月24日のクリスマスが一年で一番の繁忙期の場合、12月24日に申請された年次有給休暇を12月26日に変更することは認められています。
しかし、一概に「忙しいから」という理由では、時季変更権は認めらないことになっております。
具体的には、その労働者が所属する事業場を基準として、事業の規模・内容・その労働者の担当する作業の内容・性質などを考慮して客観的に判断をすることが、判例の考え方になっております。
各従業員が取得できる年次有給休暇のうち「5日を超える日数分」については、会社が日にちを指定して与えることが出来る制度があります。
これを使うと、例えば年次有給休暇が15日ある従業員なら、5日分は従業員自身が自由に日にちを決めて取得できます。
残りの10日分については、従業員が持つ時季指定権は消滅し、会社が計画に基づいて年次有給休暇を与える日にちを調整出来るようになります。
会社が年次有給休暇の日にちを指定するパターンは、以下の3つです。
- 個人別付与方式
会社が個人別に年次有給休暇計画表を作成し、それに従い休みを与える方式
- グループ別付与方式
課・係など部署ごとに従業員を分け、交代で効率良く休みを与える方式
- 一斉付与
特定の日に事業場全体を休業とし、全従業員に年次有給休暇を与える方式。流れ作業の工場などで採用されやすい。
ここで年次有給休暇が3日しかなくても、一斉付与の対象になるのかという問題があります。
答えとしては、5日を超える年休がない従業員には会社独自の特別な年次有給休暇を与えるか、平均賃金の60%を以上の「休業手当」を支払うなどの補償をすることになります。
いかがでしたでしょうか。
国としては、労働者に年次有給休暇を取得して欲しいと思っていますが、実際はなかなか休めていない人が多いのかもしれません。
日本の取得率は、50%前後を推移しております。
また、中小零細企業になるほど、取得率は低くなる傾向にあります。
最新情報としては、年次有給休暇の取得促進をすることで、厚生労働省の職場意識改善助成金を受給できるケースもあります。
社員が元気で働くからこそ、会社も豊かになるものと思います。
年次有給休暇取得率アップの環境整備を、社長は検討してみてはいかがでしょうか。
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