会社内で起きるセクハラの定義と基準 -セクシャルハラスメントの種類と職場での実例を紹介-

執筆者: 柳田 真 職業:社会保険労務士、産業カウンセラー
はじめに

こんにちは、社会保険労務士の柳田真です。

 

東京都議会の本会議におけるヤジ問題で、再び注目を浴びる結果となった「セクシャルハラスメント」

 

今回から2回に渡り、セクシャルハラスメントの定義、種類、企業に課されている義務などについてお話させていただきます。

 

セクシャルハラスメントの定義

男女雇用機会均等法では「職場において行われる性的な言動で女性労働者の対応によりその労働条件につき不利益を受けること、またはその性的な言動により当該女性労働者の就業環境が害されること」をセクシュアルハラスメントと定義しています。

そして事業主に対し、防止のために雇用管理上必要な配慮をしなければならないとしています。


さらに「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(以下、「セクハラ指針」)(厚生労働省:平成24年10月1日施行)において、具体的に説明されております。

 

 

職場におけるセクシャルハラスメントの種類
対価型セクシャルハラスメント

「職場において行われる労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応により、当該労働者が解雇、降格、減給等の不利益を受けること」を対価型セクシャルハラスメントと言います。

 

その具体例として、以下のような行為があります。

 

  • 事務所内において、事業主が労働者に対して性的な関係を要求したが、拒否されたため、その労働者を解雇した。
  • 出張中の車内において、上司が労働者の腰、胸等を触ったが、抵抗されたため、その労働者について不利益な配置転換をした。
  • 営業所内において、事業主が日頃から、労働者に係る性的な事柄について公然と発言していたが、抗議されたため、その労働者を降格した。

 

環境型セクシャルハラスメント

「職場において行われる労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じること」を環境型セクシャルハラスメントと言います。

 

具体例は以下のような行為です。

 

  • 事務所内において、上司が労働者の腰、胸等に度々触ったため、当該労働者が苦痛に感じ、その就業意欲が低下している。
  • 同僚が取引先において、労働者に係る性的な内容の情報を意図的かつ継続的に流布したため、その労働者が苦痛に感じて仕事が手につかない。
  • 労働者が抗議しているにもかかわらず、事務所内にヌードポスターを掲示しているため、苦痛に感じて業務に専念できない。

セクハラ認定に含まれる職場・労働者とは
職場とは

職場とは、労働者が通常就業している場所以外の場所であっても、業務を遂行する場所については「職場」に含まれます。

例えば、取引先の事務所取引先と打ち合わせするための飲食店顧客の自宅等も該当します。

つまり、出張先などで嫌がらせを受けた場合でも、それはセクシャルハラスメントに当たるということです。

 

労働者とは

労働者とは、正規労働者のみならず、パート、アルバイト、契約社員等、いわゆる非正規労働者を含む、事業主が雇用する全ての労働者が当てはまります。

 

派遣労働者については、派遣元事業主のみならず、派遣先事業主も、その雇用する労働者と同様な措置を講ずる必要があります。

性的な言動とは

性的な言動とは、性的な内容の発言及び性的な行動を指します。

 

「性的な内容の発言」とは、性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報を意図的に流布すること、性的冗談、からかい、食事・デートへの執拗な誘い、個人的な性的体験談を話すこと等を意味しております。

「性的な行動」には、性的な関係を強要すること、必要なく身体に触ること、わいせつな図画を配布すること等が含まれます。

 

 

おわりに

平成26年7月1日に、セクハラ指針が改正され、職場におけるセクシャルハラスメントに、同性に対するものが追加されました。

例えば「あの人はふしだらである」等の女性同士の噂話も、セクシャルハラスメントに該当するという内容です。

同性同士の会話でも、誰かを傷付けないように気を付けてましょう。

 

次回は、職場におけるセクシャルハラスメントを防止するため、事業主に求められている雇用管理上講ずべき措置の内容を具体的に説明いたします。

 
 コラムニスト情報
柳田 真
性別:男性  |   職業:社会保険労務士、産業カウンセラー

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やなぎだ労務管理オフィス、社会保険労務士の柳田 真(やなぎだ まこと)です。メンタルヘルス対策を重点業務としています。
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【保有資格】
 社会保険労務士(東京都社会保険労務士会所属)
 一般社団法人日本産業カウンセラー協会認定 産業カウンセラー
 中央労働災害防止協会登録 心理相談員
 一般社団法人産業保健法務研修センター認定 メンタルヘルス法務主任者

【代表者経歴】
 東京都社会保険労務士会 総務・財務委員会委員
 東京都社会保険労務士会港支部 総務委員長
 東京都社会保険労務士会 無料電話相談(社労士110番)担当
 一般社団法人産業保健法務研修センター 正会員
 港区役所 国民年金係相談窓口担当
 足立年金事務所 厚生年金適用調査課
 柏労働基準監督署 就業規則・36協定点検指導員