葛根湯やのど飴もドーピングに!?市販の風邪薬や漢方薬で起きる「うっかりドーピング」とは
アスリートやスポーツ選手が不注意で禁止物質を摂取してしまう「うっかりドーピング」。漢方薬は自然由来のものだから服用しても大丈夫だろう、というのは間違いです。注意すべき生薬とは?また、スポーツ愛好家向けに体調維持に役立つ漢方薬も紹介。
こんにちは、薬剤師の田伏将樹です。
ドーピングとは、スポーツの競技者が成績を伸ばすために薬物などを用いて能力を高めようとすることです。
また、その薬物の使用を隠す行為も含まれます。
「フェアプレーの精神に反する」「薬物が競技者の健康を害する」「スポーツの魅力そのものが損なわれる」等の理由で、ドーピングは禁止されています。
どのような競技でどのような薬物が禁止となるか、世界アンチドーピング機構により細かく規定されています。
ドーピングで気を付けなければいけないことは、競技者が、薬物を意図的に使用したのかどうかに関わらず、検査において禁止薬物成分の反応が出れば、すべてドーピングとなることです。
全く意図せずに禁止薬物を摂取してしまいドーピングとなることを「うっかりドーピング」と言います。
そしてこの「うっかりドーピング」を起こしてしまう代表的な例が、風邪薬や漢方薬です。
興奮薬に分類される「エフェドリン」
総合感冒薬に配合されることもある「エフェドリン」という薬は、興奮薬に分類されます。
本来の能力以上の能力が発揮されると考えられる薬物に該当し、競技時の使用が禁止されています。
このエフェドリンの類は、「麻黄(マオウ)」という生薬に含まれています。
麻黄は多くの漢方薬に配合されています。
「葛根湯」や「麻黄湯」などカゼのときに使う薬にも使われます。
漢方薬は自然由来のものだから服用しても大丈夫だろう、というのは間違いです。
心機能を高めたり、筋組織量を増加させたりする「ヒゲナミン」
また、2017年に「ヒゲナミン」という成分が禁止物質に例示されました。
心機能を高めたり、筋組織量を増加させたりする効果が考えられる成分に該当します。
この「ヒゲナミン」は、次のような生薬の服用によっても検出される可能性があります。
- 附子(ブシ)
- 細辛(サイシン)
- 呉茱萸(ゴシュユ)
- 丁子(チョウジ)
- 蓮肉(レンニク)
- 南天実(ナンテンジツ) など
これらの生薬を配合している漢方薬には、注意が必要となります。
ノド飴・胃腸薬に含まれているケースも…
漢方薬以外にも、「南天実」は一部のノド飴に使われています。
「丁子」は、胃腸薬にも配合されていることがあります。
市販薬では、商品名から分からなくても、生薬成分が配合されていることもあります。
不明なときは薬剤師にご確認ください。
スポーツ選手をドーピングから守る「スポーツファーマシスト」
また、もし競技のために、薬の使用について相談が必要な場合は、日本アンチドーピング機構公認の薬剤師である「スポーツファーマシスト」に相談することができます。
一方、市民マラソンのような一般的なスポーツ大会においては、薬の服用に対する厳しい規定はないでしょうから、漢方薬を服用して構いません。
実際に、体調を維持するために、普段から漢方薬を服用しながらスポーツをしている人もいるのではないでしょうか。
そんな人におすすめの漢方薬をご紹介します。
「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」には、痛みを緩和する効果があります。
急に筋肉がけいれんをしたように起こる疼痛、いわゆる「足がつった」ときに使います。
即効性のある漢方薬です。
「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」には即効性はありませんが、著しく疲労してしまった後の倦怠感に使うことができます。
体力回復を助ける漢方薬です。
「五苓散(ごれいさん)」は、水分の巡りを良くする漢方薬です。
汗をかき水分を消耗し、水分補給してもなかなか喉の渇きが治らないときに適します。
「清暑益気湯(せいしょえっきとう)」は、夏場に熱中症・脱水症の予防に用いられる漢方薬です。
余分に汗が漏れないようにするはたらきがあります。
「葛根湯(かっこんとう)」は、カゼの漢方薬ですが、体を温める効果があるので寒い日の競技で体温の低下が心配なときに用いられることがあります。
ただし発汗作用があるので、脱水症に備えて十分な水分摂取が必要です。
大会の日に風邪や腹痛などがあっても薬を飲んでなんとか乗り切ろうとする気持ちも分かりますが、体にはいつも以上の負担をかけます。
体調が悪い時は、無理せず棄権する判断も必要です。
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