最近の日本酒ブームによる恩恵は?日本酒の歴史と文化(江戸~昭和)-後編-

執筆者: 純米狂@takezo
はじめに

前回「日本酒の歴史と文化 -前編-」として、安土桃山時代までを見てきました。

 

今回は後編として、江戸時代~近年を見てみることにしましょう。 

 

 

江戸時代における歴史と文化

日本酒の仕込みは、気温の低い冬場に仕込むいわゆる「寒仕込み(かんじこみ)」が現在は主流なのです。

江戸時代初期まで、真夏の盛りを除いて「新酒(しんしゅ)」「間酒(あいざけ)」「寒前酒(かんまえざけ)」「寒酒(かんざけ)」「春酒(はるざけ)」と、一年を通じて5回も酒を醸していた「四季醸造」という方法が用いられていました。

 

しかし延宝1年(1673年)に、酒造統制の一環として、「寒造り」以外の醸造が禁止された(寒造り以外の禁)影響や、雑菌の繁殖の恐れが少なく醪(もろみ)の温度管理が容易であること、農閑期の為、優秀な蔵人が確保出来ることなどから、四季醸造はしばらく途絶えたのでした。

現在では一部の蔵元さんで「四季醸造」を行っています。

 

(江戸時代の酒造りの風景)

 

それまで全盛期を迎えた京都伏見の造り酒屋なのですが、中期以降、台頭してきたの酒に主役を奪われます。

「樽廻船」にお酒を積み込み江戸へ運ばれ、庶民の絶大な人気を誇るようになったのです。

 

そして保存性をさらに高めるため、ルイ・パスツールが発見した低温殺菌法や、火落ち酸敗の危険を低くする柱焼酎の混和法(アルコール添加)など、画期的な処理技術が開発されました。

 

(お酒を積んだ樽廻船)

 

しかし日本では、(前編でも記載しましたが)「御酒之日記」に火入れのことが記述されていることから、パスツールの火入れ法が発見される300年ほど前、室町時代には既に火入れ法を発見していたということになるのです。 

 

明治時代における歴史と文化

明治時代になると、「酒税」により自家醸造(どぶろく)が完全に禁止になります。

そしてそれまで樽や壺に量り売りされていた日本酒も、瓶詰めにされて販売されました。

 

昭和37年に国立醸造試験所(現・酒類総合研究所)が設立され、明治42年に同試験所で「山廃もと(やまはいもと)」が開発され、翌明治43年には現在の酒造り主流となっている「速醸もと(そくじょうもと)」が開発されました。

 

それと同じく明治42年に1升瓶が開発されます。 

 

(酒類総合研究所)


昭和時代以降における歴史と文化

昭和に入ると以下のような技術革新が相次ぎました。

 

  • 米の形を保ったまま高度精米が出来る「竪型精米機」の発明
  • 現在使われている酵母としては最も古い清酒酵母である、第6号酵母(新政酵母)の誕生
  • 後に「酒米の王者」として全国に君臨することになる山田錦が、兵庫県立農事試験場において登場

 

しかし1937年(昭和12年)、日中戦争が始まると事態が一変しました。

翌1938(昭和13)年には、政府による日本酒の生産統制が実施されたのです。

 

この時満州で誕生したのが、「第一次増産酒」と呼ばれるお酒なのですが、これは日本酒にアルコールを添加して量を増した上、そのままでは度数が高くて飲めないので糖類を加えたものです。

 

その後、太平洋戦争の勃発により、「第二次増産酒」と呼ばれるお酒も誕生しました。

これは大戦中の物資不足から、いかに米を使わずに酒を造るかの研究過程で生まれた代物だったようです。 

 

(酒米の王様 山田錦)

 

昭和18年には特級、1級、2級という級別制度が始まります。

平成元年に級別制度が見なおされ、平成4年に全廃。その後特定名称酒等のような現在のスタイルに変更されました。

 

戦後の日本酒の流れ

終戦後には、第二次増産酒よりも効率良く製造出来る「三倍増醸酒」(三増酒)が登場。

これは米と米麹で作ったもろみに水で希釈した醸造アルコールを入れ、さらに糖類や酸味料などを添加して味を整えたお酒のことです。

 

通常の日本酒よりもはるかに少ない原料で、日本酒が造れるため低コストで済むというメリットがある半面、「日本酒は二日酔いする、悪酔いする」などといった悪しきイメージがつけられ、それにより日本酒消費の長期低迷をもたらしました。

2006年の酒税法改正により、三増酒は清酒という区分ではなくなりました。

 

近年の日本酒ブームで…

しかし、その後に起きる「淡麗辛口ブーム」「地酒ブーム」「吟醸酒ブーム」「純米酒ブーム」などを皮切りに、各地の酒蔵が品質重視の日本酒を醸造することにシフトしました。

 

こうしたことから、ここ数年若手の蔵元さんや女性杜氏さんなどの台頭もあり、過去に類を見ないほど、日本酒のレベルが非常に高いものになってきているのです。

 

今後、ますます日本酒から目が離せませんね。

 

おわりに

いつも日本酒は飲むけれど、歴史までご存知の方はあまりいらっしゃらないのではないでしょうか。

 

しかし日本酒の歴史に触れることによって、普段何気なく飲んでいる日本酒も、いつもより少しだけ深い味わいに感じられるかもしれません。 

 
 コラムニスト情報
純米狂@takezo
性別:男性  |   現在地:山梨県  |  

日本酒利き酒師 純米狂@takezoです。
コラムでは、日本酒の素晴らしさを少しでもお伝え出来れば・・・と思っております。

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