天気急変、雹(ひょう)が降ってきた!暑い夏に氷が降るのはなぜ?
「雹(ヒョウ)」は、俳句では夏の季語。夏に氷が降る原因は?気象予報士が分かりやすい図を使って、雹が降る仕組み・条件を解説。雹と霰(あられ)の違いもわかる!
こんにちは、気象予報士の金子大輔です。
この夏は、都心の近くで降雹が相次ぎました。
7月18日には豊島区や練馬区などで、8月19日には世田谷区などを中心に激しく雹が降り、うっすら白くなったところもあったようです。
冬に雪が降るのは違和感がありませんが、真夏の雹というのは摩訶不思議ですね。
なぜ7月や8月に大きな氷の粒が降ってくるのでしょうか?
雹とは、空から降ってくる氷の塊です。
雪のようにふわふわしておらず、しっかりとした固い氷で、形は球だったり、いびつな金平糖のような形だったりします。
大きさが5ミリメートルより小さいものは「霰(あられ)」と呼んで、雹と区別しています。
一部の地域を除いて極めて珍しい現象ですが、過激な現象なので一度体験したら忘れることができないでしょう。
継続時間は短く、ほぼ10分以内ですが、瞬く間に大量に積もってしまうこともあります。
なお、1917年6月29日には埼玉県熊谷市で「カボチャ大」の雹が降り、世界的にも最大規模とされています。
地面には50センチ以上のクレーターが多数でき、大きな被害が出ました。
さすがにこんなシロモノには出くわしたくないですね。
雹は激しい雷雨に伴って降ってきます。
私は8月19日の世田谷の降雹に出くわしましたが、まるで空襲のような恐怖感を覚える雷鳴が連発し、台風顔負けの暴風雨に交じって雹が叩きつけてきました。
そう、雹は雷雨の中でも、とりわけ激しい雷雨のときに降りやすいのです。
雲は「上昇気流」のあるところで発生します。
さまざまな原因で、地表の空気が上昇気流で持ち上げられます。
上空は気温が低いので持ち上げられた空気が冷やされ、やがて露点に達して水滴が吐き出されます。
これが「雲」です。
上昇気流がそれほど強くないときは、雲はあまり厚くなりません。
反対に、強い上昇気流があるときには強い力で高いところまで空気が持ち上げられるため、厚い雲が発生します。
雲が厚くなるほど、降る雨も強くなります。
一般の低気圧の上昇気流は秒速数十センチメートルくらい、非常に強い積乱雲(雷雲)では秒速30メートルを超えるとされています。
まさに、台風並みの風速で空気が上空に持ち上げられているのです。
雲からは雨粒が落下してきます。
しかし、落下途中に強い上昇気流に会うと、雨粒は再び上空高くに舞い上げられます。
上空の高いところは気温が大変低いので、舞い上げられた雨粒は凍って霰(あられ)になります。
この霰は雲の中を再び落下しながら、周りの水分を凍りつかせ、大きくなっていきます。
そこでまた強い上昇気流に会って舞い上げられ…これを何回も繰り返すのです。
そして、しまいには強い上昇気流でも支えきれない大きな雹となって落下してくるのです。
ですから、雹が降ってくるときには、猛烈な上昇気流があると言えます。
雹が夏の激しい雷雨に伴って降るのは、このためです。
以上のようなメカニズムで雹は降ってきます。
空が異常と言えるほど暗くなり、耳がキーンとなるほどの雷鳴に見舞われたら、雹が降ってくることを覚悟する必要がありそうです。
なお、雹が降ってきたら、すぐに安全な建物の中に避難しましょう。
硬い氷の粒である雹は、勢いよく当たれば、車のボディに無数の傷やへこみを作るほど威力があります。
その粒のサイズが大きければ、傘を突き破ってしまうことも…。
もし、カボチャ大のものが当たったらと想像すると、ゾッとします。
上でお話ししたとおり継続時間はそれほど長くありませんので、雨宿りしてやり過ごしてくださいね。
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生き物が大好きな気象予報士&教員&物書き&占い師。生き物はゴキブリも含めすべて好きで、生き物と天気については話し出したら止まりません。ディズニーランド好き、絶叫系好き、激辛好き。
著書
『こんなに凄かった! 伝説の「あの日」の天気』
『気象予報士・予報官になるには』
『気象予報士 (シリーズ“わたしの仕事”)』
『世界一まじめなおしっこ研究所』
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