日本の梅雨の特徴とメカニズム。「梅雨はシトシトと雨が降り続く」というイメージは、全国共通じゃなかった!
梅雨と一口に言っても、東京と鹿児島では性質がまったく異なります。東はシトシト弱い雨が降り続くイメージ、西は激しい豪雨が叩きつけるイメージ。 その違いの仕組みを、図を使って気象予報士がわかりやすく解説。
こんにちは。生き物好き&占い好きな気象予報士の金子大輔です。
沖縄、奄美地方に続いて、26日には九州南部、28日には九州北部や四国でも梅雨入りの発表がありました(2018年)。
梅雨は、北海道を除く日本で、本格的な夏を迎えるために乗り越えなければならない「儀式」のようなものとも言えそうですね。
中学校の理科の教科書には、暖かく湿った「太平洋高気圧」(小笠原気団)と冷たく湿った「オホーツク海高気圧」がぶつかり合うことでできると説明されています。
高気圧と高気圧の間は低気圧となり、天気がぐずつくのです。
季節が進むにつれて、太平洋高気圧がだんだん発達し、前線を押し上げれば梅雨明けを迎えます。
そして、太平洋高気圧に覆われると、うだるような夏空が続きます。
みなさんは、梅雨と聞いて、どんなイメージがありますか?
おそらく東京の方であれば、シトシトと弱い雨が降り続くイメージがあるのではないでしょうか。
一方で鹿児島の方であれば、海が落っこちてきたような豪雨が、激しい雷鳴とともに叩きつけるイメージがあることでしょう。
天気図上での梅雨前線は、西から東まで一本の線で描かれることがほとんどです。
ただし、多くの場合、性質は東西で大きく異なっているのです。
下の写真を見てみましょう。
東側では、教科書どおり、海洋の「冷たく湿った空気」と「暖かく湿った空気」がぶつかっています。
典型的な「停滞前線」で、乱層雲が広がり、雨は穏やかに降ります。
西側の大陸方面では、大陸の「暑く乾いた空気」と海洋の「暖かく湿った空気」がぶつかっているのがわかりますね。
そう、ここでぶつかっているのは「暖かい空気」同士で、温度差は比較的小さく、違いは水蒸気の含有量です。
このような前線は「水蒸気前線」と呼ばれることがあります。
この「水蒸気前線」とも呼ばれる領域の周辺では、大気の状態が非常に不安定になり、積乱雲が次々に発生します。
積乱雲は、通称「雷雲」や「入道雲」と呼ばれており、落雷や突風、激しい雨をもたらします。
乱層雲(雨雲)
積乱雲(雷雲、入道雲)
九州などでは、梅雨前線が大陸の性質を引きずっているので、積乱雲によって滝のように雨が降るのです。
一方、関東地方はどうでしょうか?
積乱雲は前線上を東進します。
ですが、関東平野は西側を高い山で囲まれているため、積乱雲が侵入しにくく、激しい雨はあまり降らないというわけです。
ただし、上空に強い寒気が入ったり、台風や熱帯低気圧が近づいたりしたときにはこの限りではないので、そのときそのときの気象情報を確認することは大切です。
なお、梅雨は年によっても個性があります。
- 陽性梅雨…スカッと晴れたと思えば雨がザーザー降る
- 陰性梅雨…いつも曇りがちでシトシト雨が降ったりやんだりする
- 空梅雨…雨がほとんど降らない
- 雷梅雨…雷を伴う雨が多い など
気象庁発表の季節予報によると、2018年の6月は、全国的に気温が高めで降水量が多い予想になっています。
一方、7月になると、気温は依然として高めで、東・西日本では降水量が少ない予想になっています。
このため現時点では、どちらかといえば「陽性梅雨」で、梅雨明けが早い可能性が高いと考えられます。
天気予報で梅雨前線について解説しているのを見かけたなら、予想が当たっているかどうかや、地域によってお天気に違いが出ているかどうかなど、確認してみてはいかがでしょうか。
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生き物が大好きな気象予報士&教員&物書き&占い師。生き物はゴキブリも含めすべて好きで、生き物と天気については話し出したら止まりません。ディズニーランド好き、絶叫系好き、激辛好き。
著書
『こんなに凄かった! 伝説の「あの日」の天気』
『気象予報士・予報官になるには』
『気象予報士 (シリーズ“わたしの仕事”)』
『世界一まじめなおしっこ研究所』
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