お店の店頭に飾られてある新作。ふと足を止めて「良いな」、と思ったことがありませんか？

ふらっと立ち寄ることもあると思います。

そのまま購入する方も少なくありませんし、マネキンが着ている服を一式（いわゆるマネキン買い）をする方もいます。

マネキンを見て買う方のほとんどは衝動買いです。でもマネキンの服がどうして目に留まったのでしょうか？

なぜ急に欲しくなったんでしょうか。

それはお店の"戦略"にハマってしまったからなのです。

アパレルでは「ビジュアル・マーチャン・ダイジング（VMD）」という手法を用いて売場を作っています。

端的に言えば、見せることで売る、ということになります。

一般的なマーチャンダイジングは、最初に売上情報などを元に分析し、売りたい商品を決めます。

しかし、VMDはその逆で、まずは売る商品を決めて（見せて）からデータ収集し、結果を分析します。

アパレルにとってVMDは生命線で、ほぼ全ての店舗で知らず知らずのうちに採用しています。

服をどこに置くか、どう陳列するかといったことも全てVMDの一つです。

マネキンはVMDで一番大切な役割を果たします。

マネキンは上半身のもの・下半身のもの・そしてトータルと3種類存在しますが、VMDではしっかり使い分けされています。

たとえばプッシュしたいTシャツがあるなら上半身、トータルコーディネートを提案するなら一体まるごと使用します。

どこに配置するかも重要で、まず通行人の目に留まるようにさせるのが、マネキンの役目となっています。

お店の前でマネキンの服を見てしまいませんか？

「あれ良いな」、と目に留まることがあれば、それはお店の想定通りの結果ということになります。

ハンガーに服を掛けるだけでもVMDが重要になっています。

ハンガーの掛け方は二通りあり、こちらから見て服全体が見える掛け方をフェイスと呼びます。

奥に向かってハンガーが掛けられている状態です。

横一列にずらっと服が並び、手に取って服全体を確認できる掛け方がスリーブです。

こちらは服の袖が見えているだけで、デザインは手に取らないと確認できません。

基本的にアウターや軽衣料などは、このフェイスとスリーブをうまく組み合わせ、売場を一つ作っていきます。ちなみに夏より冬のほうが、お店のラックや壁面に掛けられている服が多くなっています。

その理由がアウター類によるものです。

VMDはただ服を見せたらいい、という訳ではありません。

流行色・素材・売場の構成全てを考える必要があります。

たとえばモノトーン一色で固めても誰も見向きもしませんし、逆にカラフルすぎても素通りしてしまいます。流行色などをうまく差し色にし、素材を合わせてバランスを取ることが重要です。

こうして売場を一つ作ったら隣に移り、また同じようにVMDを構築していきます。

それを重ね、お店全体を"コーディネート"することが大切です。

入店を促し、導線を確保、手に取りやすい位置に服を置くなど、お店がどんどん仕掛けを作って売上につなげていくのがVMDと言えるでしょう。

このように、お店側が仕掛けを用意する方法がVMDです。

しかし、衝動買いが多い方の財布にとっては黄色信号が灯ります。

いらない服が増えていく方の多くは、この仕掛けにはまってしまっているのです。

そのときの気分で買ってしまうと、着ない服がどんどん増えていく可能性もあります。

逆に仕掛けがある、と理解しておけば、無駄な買い物も極力減らせます。

マネキンの前で立ち止まったら声を掛けられますし、スリーブされているアウターを手に取ったら試着を勧められます。

そこまで欲しくない、ただ目に留まっただけの際は注意しておきましょう。

給料日前になるとお店のVMDも様変わりしたり、特に力を入れ始めます。

無駄買いが多いと感じている方は、お店のマネキンの誘惑に注意しましょう。