スポーツ時の怪我No1「足関節捻挫」は放置NG!再発や後遺症を防ぐ基礎知識
スポーツでよくある怪我「足関節捻挫」を軽視しない!「ただの捻挫だ」と放置しておくと、長引いたり、後遺症が残ったりする恐れが。
理学療法士の高田彰人です。
今回は、スポーツ現場でよく発生する「足関節捻挫」について解説します。
今回の記事によって、足関節捻挫を軽視して再発を繰り返したり、スポーツパフォーマンスの低下を引き起こしたりするスポーツ選手を少しでも減らせるように必要な知識をご提供できたら幸いです。
足関節内反捻挫は、最も発生頻度の高い外傷であり、全スポーツ外傷の12%が足関節靭帯損傷であるという報告があります。
発生頻度が高いということはスポーツに携わるものとして、最も関わる機会が高いことになります。
これは言い換えると、知識として蓄えておく必要性も高いと言えます。
ですが、足関節捻挫はその発生頻度の高さのせいで、かえってスポーツ現場で軽視されてしまうケースも見受けられます。
- 参考情報 藤巻悦夫:スポーツにおける足関節外傷の診断と治療,整形外科,46, (10),1397-1407,1995.
急性期では受傷部位を確認し、RICE処置にてスプリント(副木)、包帯、テーピングによる固定、アイシングを行い、患肢挙上により安静を保つことが重要です。
歩行に際して足関節に強い疼痛を感じるようならば、整形外科(できればスポーツドクター)を受診することをお勧めします。
レントゲンチェックによる骨折の有無判定や、靱帯の緩みを調べるストレスレントゲン、最近ではMRIが有用とされます。
損傷の程度を3段階に分けると、治療やリハビリテーション法の決定に有用となります。
- 参考情報 ZAMSTホームページ
Ⅱ度:靭帯の部分断裂
Ⅲ度:靭帯の完全断裂
足関節捻挫は、靭帯損傷もしくは靭帯断裂です。
このように用語が異なるだけで、同じ怪我であっても印象は全く異なります。
実際のスポーツ現場では、重症度を考慮せずに「ただの捻挫だから、病院なんか行かずにテーピングをしておけば大丈夫」などという場面が時折見られます。
このような安易な判断により、足関節捻挫の後遺症が残ってしまった場合があるのも現実です。
足関節には多くの病態があり、整形外科での診察を受けずに軽視していると、捻挫として扱われてしまうことも多々あります。
また、実際に病院にかからずに症状が長期化するために受診して、下記の診断を受ける症例を多く経験しています。
痛みをとるためには正確な診断が必要であり、そのためには医療機関への受診が必要です。
場合によっては靭帯損傷ではなく、骨折を伴っていることもあるため、鑑別が必要となります。
離断性骨軟骨炎など手術によって摘出が必要な症例もあります。
外くるぶしの後方に生じ、足首を下に向けたときに制限が生じます。
背伸びをするときに、腱がこすれて痛みが生じます。
母趾を反らせると痛みが生じるのが特徴です。
外くるぶしの周囲を通過する腱であるため、足関節捻挫との鑑別が必要となります。
外くるぶしの上を腱が乗り上げ、骨とこすれて痛みます。
前方へダッシュしたりすると生じることが多く、ひねっていないのに捻挫を訴えることがあります。
15〜16歳で生じることが多く、内くるぶしの下に痛みが生じ、あぐらをかきにくいなどといった症状を訴えます。
捻挫の受傷後に、歩行では痛みがないのに、走ると痛みが生じます。
踵に付着する靭帯の損傷が考えられるため、ヒールロックなどのテーピングによって安定させると緩解することが多くあります。
- 参考情報 田渕健一ら:足関節捻挫への対応と問題−足関節捻挫を語る−:Sportsmeicine.89,6-9,2007.
足関節捻挫を軽視することによる代償
ただの捻挫だと思って診察を受けないで放置していると、長引いたり、後遺症が残ったりする恐れがあります。
- 症状の軽視、誤診などによる症状の長期化
- 足関節の可動域制限
- バランス能力低下
- 足関節周囲を主とする筋力低下
足関節捻挫にはその他にも多くの代償があるため、正確な診断からリハビリテーションへの展開が必要です。
一度受傷すると再受傷する者が多く、足関節不安定症に移行する恐れがあるため、予防が重要となります。
正確な診断や最善のリハビリテーションが行われなければ、その再発率はさらに高まることが予想されます。
- 参考情報 Freeman,M:The etiology and prevention of functional instability of the foot.J Bone Joint Surg,47(4)B,678-685,1965.
私自身、現役時代に多くの足関節捻挫を経験し、再発するたびに足首の可動域低下をはじめとする身体機能の低下を実感してきました。
ですが、理学療法士・アスレティックトレーナーになり、サポートする立場になった今でも、足関節捻挫がスポーツ現場で軽視される場面に遭遇しています。
少しでも足関節捻挫に対する病態の理解が広まることを望んでいます。
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【資格】
理学療法士
認定理学療法士(スポーツ理学療法)
日本体育協会公認アスレティックトレーナー
日本コアコンディショニング協会マスタートレーナー
【トレーナー活動歴】
土浦日本大学高等学校
茨城県立取手松陽高等学校 男子バスケットボール部
茨城県立取手第二高等学校 男子バスケットボール部
茨城県少年男子国体バスケットボールチーム
車椅子バスケットボール 日本代表選手
【研究分野】
体幹機能
バスケットボールの障害
足関節捻挫
疲労骨折
肉離れ
【所属学会】
日本理学療法士協会
日本整形外科スポーツ医学会
日本臨床スポーツ医学会
日本コアコンディショニング協会
【コンセプト】
①監督‐選手‐トレーナーの共通理解の徹底化
②トレーニングと障害予防の融合
③アウターマッスルとインナーマッスルの共同
【トレーナー目標】
日本が世界では通用しないと思われているスポーツ分野の底上げ
【ブログ】
バスケ選手のためのトレーニング理論
http://ameblo.jp/arinco-power55/
【アドレス】
g.torini.9@gmail.com
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