ワインラベルの収穫年から分かる、美味しいワインの選び方 -中編- (2/2)

執筆者: 鈴木暢彦 職業:ソムリエ・ワイナリーツアーアテンド
熟成にはまとまりと複雑性の2つの効果がある

ワインを熟成させる理由はいくつかありますが、ここでは2つの熟成による効果をあげます。

1.

渋味などの刺激が強いため、早い段階で飲みにくい。

時間を置くことで成分を結合、落ち着かせ、まとまりを持たせる(バランス)。

2.

木の樽などで熟成(ゆっくり酸化)させることで、味わいや香りに深み、複雑みを持たせる(複雑性)。

つまり、Bのワインは、当時すぐに出荷せずにワイナリーで熟成され、ワインがまとまり、ある程度複雑みを持つワインになってから出荷されたということが想像出来ます。

“複雑み”というのは、要は1つのワインから感じられる香りや味わいに、多くのエッセンスがあるという意味です。

ワインの深み、奥ゆかしさや余韻につながり、そのワインの評価に大きく影響を与えます。

 

熟成の有無によるワインの特徴のまとめ
  • A2013

昨年までブドウ。 

ストレートな果実味、シンプルな構成のワイン。

香りも味わいもフレッシュな果実味が支配的で、シンプルな構成。

飲み頃は4〜5年以内。

  • B2010

近年まで熟成された後、出荷。

香りも味わいも熟れた果実味の他、酸化した過程で得られる香り、木樽で熟成された場合は木から得られる渋味やスパイス香などの複雑な構成。

飲み頃は5年〜10年後、ものにより20年以上

つまり、ワイナリーが同時期に2013年のワインと2010年のワインを出荷したのであれば、明確にそれぞれ別のメッセージが込められたワインということになるのです。


もちろん、全てが2つの種類に分けられるわけではありません。

しかし、これらのことを踏まえると、2013年で複雑なワイン、2010年でシンプルなワインというのは、あまり考えられないということが分かってきます。 

 

おわりに

収穫年は、決して良い年の判断だけに必要なものではありません。

いつ収穫したブドウのワインか、そのワインがいつ出荷したのか、この情報を掘り下げると生産者の考えやワインの本質が見えてきます。


次回は3番目の数字、アルコール度数についてを考察していきましょう。 

 
 コラムニスト情報
鈴木暢彦
性別:男性  |   現在地:シエナ  |   職業:ソムリエ・ワイナリーツアーアテンド

2008年 日本ソムリエ協会 ワインエキスパート取得
2009年 4月 イタリア トスカーナ州フィレンツェへ
2009年 10月 シエナにある国立のイタリアワイン総合文化施設エノテカイタリアーナにて研修
2010年 エノテカイタリアーナ ソムリエ
2014年 エノテカイタリアーナを退職
      イタリアソムリエ協会 AISソムリエプロフェッショニスタ資格取      得
      中心街のリストランテで働きながらワイナリーツアーなどを行う。
      訪問ワイナリーは70件以上
      日本のインポーターへのワイナリー紹介など

鈴木暢彦

ブログ 新イタリアワイン エノテカイタリアーナ
    http://enoteca-italiana.ldblog.jp/

問い合わせ nobu.enotecaitaliana@gmail.com 

 

 グルメ・レストランのコラム