都会から地方へ!Uターン・Iターン生活のすすめ -イギリスのカントリースタイルから学ぶ「憧れの田舎暮らし」-

執筆者: 五十嵐 洋介 職業:まちづくり、地域クリエイター、住宅・不動産ライター
はじめに

こんにちは、山形県へのUIターン移住支援を行っている五十嵐洋介と申します。

都会から田舎へと移住を望む人たちの理由は様々。
特に近年は「自然に囲まれた暮らしに憧れがある」「自然豊かな環境で子育てしたい」「自然の中でリタイアライフを楽しみたい」というように、「自然回帰」を理由に移住を決意する人が多いように思います。

多数の団塊世代は退職をきっかけに、第2の人生を自然豊かな場所や故郷で暮らしたいと考えるようになり、若い世代でも自然とふれあう生活の意識が増加。

今後、ますます田舎暮らしへの関心は高まっていくことでしょう。

 

 

イギリス人の田園志向

この「田舎暮らしを理想」とする考え方ですが、西洋の人々は古くから田舎への憧れを持っていました。
中でもイギリス人の田園志向はとても根強い。
イギリス人にとって田舎暮らしは一種のステータスです。

都会はあくまで仕事の場であって、決して安住・定住・永住の場とは考えません。

「都会の喧騒を嫌い、静かな田舎で余生を送りたい」

今の都会で暮らす日本人の多くが抱く想いを、イギリス人は当たり前のように持ち合わせているのです。

ではなぜ、こんなにも強く「田舎暮らし」を求めるのか。
今回はイギリス人から「田舎暮らし」というものを学んでみることにしましょう。

イギリス人が自然を求める理由

20世紀前半のイギリスは農村人口が激減し、全世帯の90%が都市生活を送っていました。
送らざるをえなかったと言った方が正しいかもしれません。

その理由として挙げられるのは、18世紀後半の「産業革命」「第二次囲い込み運動」
囲い込みにより、農民はこれまで自由に使っていた共有地から追い出されてしまいます。

そんな中、都市部では産業革命が起こり工業化が進むと、仕事に溢れていた工業都市に農民たちは逃げ込んでいきました。

収入水準が高い都会に仕事を求めるのは、傾向として今の日本に似ていますね。

こうした農業者から都市労働者に変わっていくプロセスの中で、人々から「自然」が奪われていきました。
これがイギリス人の「自然回帰」を生んだ大きな理由。
この反動が「田舎暮らし」を理想とする考え方に結び付いていくのです。

 

 

カントリースタイルの誕生

実際、都会の工場経営で財を成した上流・中産階級の人々は、都市部ではなく地方に大豪邸を建てて住み始めました。
また、年4回の「国民の休日」が認められるとベクトルはますます田園に向かっていき、決して裕福ではない人たちでさえも地方に貸別荘を借りて過ごすようになります。

しかしながら、現代のように通信技術が発達していません。

地方にいてはこれまでのように都市で工場経営が出来なくなります。

また、夏の間に開催されるロンドン社交界のように、社交も多くは都市で行われていたため、その期間中は都市に長期滞在しなければなりませんでした。

そこで、工場経営者たちは再び、都会へ戻るのです。

その際、都会に暮らすための住まいに地方の邸宅の様式を取り入れ、普及していったのがインテリア雑誌でも頻繁に取り上げられている「カントリースタイル」の始まりといわれています。

 


また、「イングリッシュガーデン」という言葉も日本でよく耳にしますが、幾何学的な庭ではなく、地方の田園をあるがままの姿で表現したガーデンスタイルが19世紀には普及。

できれば田舎に暮らしたいが、都会で致し方なく暮らす。
そのジレンマを解消すべく、イギリス人は田舎を真似た住まいに暮らすようになったのです。

おわりに

さて、現代においてはインターネット、通信技術も発達しています。
通信ネットワークを活かして「都会の仕事を田舎で行う」ということも可能になります。
また、都会にあるオシャレなお店も地方に多く出店しているほか、交通手段も便利になり、都会と田舎の距離は昔よりも近くなりました。
18世紀後半のイギリスとは状況が異なります。


「田舎暮らしを理想」とする考え方。
ますます日本にも根付いていくことを期待したいですね。

 
 コラムニスト情報
五十嵐 洋介
性別:男性  |   現在地:東京都  |   職業:まちづくり、地域クリエイター、住宅・不動産ライター

1982年、山形県酒田市生まれ。
早稲田大学 法学部を卒業後、大和ハウス工業株式会社に入社し、同大学で建築学を学びながら、住宅・マンション・インテリアの設計、都市デザインに従事。その後、SUUMO(株式会社リクルート)をはじめとする住宅・不動産媒体のライターとして活躍し、今まで200社を超える企業や経営者を取材・執筆。
現在、「株式会社 ainak」を設立し、地域活性化、まちづくりに携わる。「酒田市を音楽のまちへプロジェクト」代表。ヤマガタ未来LAB.にて「住まいのナビゲーター」としても活動し、山形県へのUIターン移住支援を行っている。

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